1.問題の記述
次世代の新しい軌道構造として,バラストレスのフローティングラダー軌道が開発された[1].これは、従来の横マクラギに対して,線路方向単位長さあたりに同程度の重量で,車両走行時に大きな曲げ剛性を持つラダーマクラギを1.5m間隔に防振装置で支持する構造である.鉄道車両が欠陥を有するレール上を高速走行すると三角波状の衝撃荷重が発生し, 鉄道軌道構造物の振動とその周辺の騒音が著大となることが知られている.そこで,フローティングラダー軌道の中心に鉛直方向に衝撃実験での三角波衝撃荷重を与え,境界要素法による非定常騒音解析法により,フローティングラダー軌道の非定常の振動騒音解析を行った.振動解析と非定常騒音解析は,それぞれ本研究室開発の有限要素プログラムDIARIST[2]および境界要素法非定常解析プログラムACOUSTICS[3]により行った.
2.モデル化
図1は,振動解析で用いたラダー軌道の有限要素モデルである.図中矢印に実験で得られた振幅が56N,周期が0.12msecの三角波の衝撃荷重を与えた.DIARISTにより振動解析を行い,またその振動解析結果を用いて騒音解析をACOUSTICSにより行った.気体密度1.2kg/m3,音速340m/sとした.
図1 ラダー軌道の有限要素モデル
3.解析結果
図2,3は,レール中央部の着目点での鉛直方向加速度の実験結果と計算結果である.
図3は,マイナスの加速度が図2の実験結果より大きくなったのは,レールパッド(図1)は実際には上方向の変形が押さえられているバネ特性挙動を示すが,解析モデルではこれを線形バネ要素でモデル化したため上方向にも変位したことによるものと考えられる.
表1は,レール中央部から横(Y)方向に9.25cmの音圧評価点での最大音圧を実験結果と解析結果である.
この鉛直方向加速度と最大音圧値により,本計算結果は実験結果に良好に一致していることがわかった.
参考文献
[1]涌井一,ラダーマクラギの開発と線路構造物のシステムチェンジ,コンクリート工学,vol.36,No.5(1998),pp.8-16.
[2]M.Tanabe,
Software Architecture for Effective Finite Element Structural Analysis on
Microcomputer, ASME PVP, 177,
99-104,1989.
[3]出浦智之,田辺誠,奥田広之,衝撃荷重に対する構造物のモーダル法を用いた非定常振動騒音解析,日本計算数理工学会
計算数理工学論文集 Vol.6 No.2, 2006.