衝撃荷重による板の非定常振動騒音解析

1.問題の記述

長さ240mm、幅30mm、板厚5mmの金属製の440Hzの周波数をもつ市販の長方形板(図1)について、衝撃荷重による非定常の振動騒音解析を行った。振動解析と非定常騒音解析は、それぞれ本研究室開発の有限要素プログラムASA[1]および境界要素法非定常解析プログラムACOUSTICS[2]により行った。

図1 実物の板

2.モデル化

図2は、振動解析で用いたソリッド要素によるFEMモデル(節点数40、要素数9)で、図中矢印の2ヵ所に振幅が1N、周期が0.002secの三角波の衝撃荷重を与えた。ASAにより振動解析を行い、またその振動解析結果を用いた板のまわりの騒音解析をACOUSTICSにより行った。表1、2はそれぞれ、振動解析と騒音解析で用いたの物理条件データである。


図2 板の振動・騒音解析モデル


3.解析結果

図3は、板の中心から真上に10cmの点での音圧の時刻暦を、図4はその計算結果を周波数分析したものである。また図5はその実験結果である。


図3 音圧の時刻歴(計算結果)


図4 音圧波形の周波数分析(計算結果)          図5 音圧波形の周波数分析(実験結果)



本計算結果は、実験結果に良好に一致し、基本振動数440Hzとその2倍の周波数にピークがあることが分かる。ここで、実験結果で1kHz以上に成分がないのは、1kHz以上をフィルタでカットしたことによる。また実験結果で650Hzにピーク値があるのは、板の打撃を手動で行ったため板のねじり振動が生じ、650Hzのねじり振動モードを刺激したことによるものと考えられる。さらに計算結果を可聴化したところ、感覚的にほぼ実物と同様な音が得られた。

文献
[1]M.Tanabe, Software Architecture for Effective Finite Element Structural Analysis on Microcomputer, ASME PVP, 177, 99-104,1989.
[2]出浦智之,津田敏明,田辺誠,奥田広之,衝撃荷重に対する振動・騒音解析,日本機械学会第12回設計工学・システム部門講演会講演論文集,No.02-31,165-168, 2002.


神奈川工科大学 工学部機械工学科・大学院工学研究科機械システム工学専攻
田辺研究室