1.問題の記述
全長327.4mm、厚さ20.0mmの穴の開いた板部品(図1@)と、直径90.0mmの円柱部品(図1A)からなる接触問題である。この板部品端部に面荷重及び線荷重をそれぞれ与え、本研究室開発の有限要素プログラムASA/CONTACTにより接触解析を行う[1]。ここでは摩擦を考慮しない場合(CASE1)と摩擦を考慮した場合(CASE2)とについて解の比較を行う。
2.モデル化
この問題では、問題の対象性から1/2のソリッド要素でモデル化(図1)し、境界条件は図2のように与えた。板部品端部の長手方向(X方向)へは2.14×10-2kgf/mm2(総荷重20kgf)の面荷重、それと直交する厚さ方向(Z方向)へは1.28×10-2kgf/mm(総荷重0.6kgf)の線荷重を与えた。ここで、板部品はX,Z方向に境界条件を与えないフリーフリー部品となっていることから、荷重を与えた反対側の端部に仮想バネを与えた(図3)。
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3.解析結果
図4は接触面間の摩擦を考慮しないの場合(CASE1)の変形図、およびそのX方向応力図である。板部品は円柱部品と穴の内側の1点のみで接触し、その接触点を中心として図のような回転変形をしたことが分かる。板部品の穴の接触点付近には高いX方向圧縮応力が集中し、最大で0.241kgf/mm2得られた。同じく穴の内側の中腹付近には0.247kgf/mm2の最大引張応力が得られた。
図5は摩擦を考慮した場合(CASE2)の変形図、およびそのX方向応力図である。CASE1の場合と異なり、板部品の穴の内側の節点が全て円柱部品に接触した(食い込んだ)状態で図のような傾き変形が生じたことが分かる。X方向の最大引張応力,最大圧縮応力はともに、CASE1と同じ位置でそれぞれ0.246kgf/o2,0.172kgf/o2得られた。圧縮応力が1点に集中したCASE1にたいし、より広範囲に分布したCASE2では、最大圧縮応力が29%程度抑えられていることが分かる。
参考文献
[1]前田良夫,田辺誠,清水健次,小宮聖司,摩擦を有するフリーフリー構造物の3次元接触解析,日本機械学会第16回設計工学・システム部門講演会講演論文集,No.06-33,92-95,
2006.